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主述のねじれ

text: 新井凜子

こんにちは、日本語チュータリング担当TA(2023年春夏学期時点)です。

*本記事は、OUマルチリンガルプラザのスタッフコラム(2023.7.11掲載分)からの転載です。

日本語で文章を書く際のよくあるミスに、「主述のねじれ」があります。「主述」とは、「主語」と「述語」のことです。「主述のねじれ」とは、修飾語などを抜いて主語と述語だけをつなげて読んだときに、主語に対して述語が合っていない状態のことを指します。

では主述のねじれについて、具体的に見ていきましょう。





「私の夢は宇宙に行きたい」という文章は主述がねじれています。主語と述語だけを取り出してつなげてみると「夢は行きたい」になります。「行きたい」のは「私」であって「夢」ではないですよね。 また「夢」は「行きたい」のではなく「(宇宙に)行くこと」です。

つまり、主語と述語だけで読んだときに、両者がうまくつながっていないのです。





「私の夢は宇宙に行くことである」とすると、主述が一致した文章になります。


では、以下の例はどうでしょうか。






「この結果」という主語と、「示唆している」という述語の間に長い修飾語が入っています。

修飾語を除いて、主語と述語だけで見てみると、前者は「この結果は示唆している」となり、主述が一致している=正しい文章になっています。

一方、後者は「この結果は示唆される」となり、主述のねじれが発生しています。「示唆される」のは「AとBの間には何らかの相関関係があること」であって、「この結果」ではありません。

つまり、以下の文章なら主述のねじれがない正しい文章になります。





学術的な文章では、複雑な内容を説明しようとして、一文が長くなる傾向があります。結果、文章の最初の方にあることが多い主語と、文章の末尾にある述語の間の距離が長くなり、ネイティブでも主述がねじれた文章を書いてしまうことが多々あります。私自身も自分で書いた文章を読み直していて主述がねじれていることに気づくことがあります。

ミスを防ぐコツとしては、以下の2つが挙げられます。

  1. 主語と述語だけで読んでみる。
  2. 適度な長さで一文を切る。長すぎる文章を書かない。

特に2について、読みやすい日本語の文章は一文が50文字程度、長くても80文字以内といわれています。一文が長くなればなるほど、文章が複雑になり、主述のねじれが起きやすくなります。文章が複雑だと感じたら、一文を二文、三文に分けることも検討してみてください。

新井凜子

大阪大学人間科学研究科博士後期課程。趣味は食べることと寝ること。色々な言語の音楽を聞くのが好きです。

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