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日本語多聴のすすめ

text: 細野怜花

みなさんは、「多聴」ということばを聞いたことがありますか?「多聴」とは文字通り「たくさん聴く」という意味で、言語学習においては目標言語の音声をたくさん聴く活動を指します。このコラムでは、「多聴」を言語学習に活用するメリットと、具体的なツール、その効果的な活用方法についてお話しします。

多聴のメリット

1. 移動中などの隙間時間を有効に使える

多聴活動では、何かを書いたり読んだりする必要がなく、耳で聴くだけでいいので、歩いているときや電車に乗っているときなどの日常のちょっとした隙間時間を、言語学習の時間として有効活用することができます。移動中だけでなく、洗い物や掃除など、家事や作業をしながら聴くこともできます。

2. 多量の耳からのインプットで聴解力が向上する

多聴活動では小説から専門書までさまざまな種類の音声を、自身の目的・興味やレベルに合わせて自由に選ぶことができます。文字情報がなく、音声情報だけを頼りに内容を理解しなければいけないので、聴解力のトレーニングに最適だと言えるでしょう。また、映画やドラマだと視覚情報で提供される状況説明や動作表現などが、すべて音声で説明されるため、より多くの言語情報を受け取ることができます。

具体的なツール

多聴活動に活用できる具体的なツールには、オーディオブック、ポッドキャスト、ラジオなどがあります。すべてアプリとしてリリースされているので、だれでも手軽に利用することができます。

オーディオブック

ナレーターや声優などが本を朗読してくれる「聴く本」です。書籍として出版されている作品が多く聴けるので、小説や専門書など、興味やレベルに合わせた作品を選びやすいというメリットがあります。代表的なアプリとしては、Amazonの提供するAudible(オーディブル)などがあります。

ポッドキャスト・ラジオ

アナウンサーや芸能人がテーマに沿って話したり、音楽を流したりするコンテンツです。書き言葉を読み上げているオーディオブックに比べ、より話し言葉に近い表現を聴くことができます。代表的なアプリとしては、Podcast、Spotify、radikoなどがあります。

効果的な活用方法

多聴音声を選ぶ際に最も大切なことは、

  1. 大体の内容が理解できるレベルのものを選ぶこと、
  2. 内容がおもしろいと思えるものを選ぶこと

の2点です。

ほとんど内容が分からないものを聴き流すだけでは、言語能力の向上には繋がりません。また、内容が分からないものを長時間聴き続けるのはストレスになってしまい、継続することが難しくなってしまうでしょう。大切なのは、「分かるものを楽しく聴く」ことです。

よって、初中級で聴解に苦手意識がある人などは、まずは母語で読んだり聴いたりしたことがあるものや、すでに内容を大体知っているものから聴き始めることをおすすめします。わたしも始めは、話をよく知っているディズニーのオーディオブックから聴き始めました。知っている話でも、聴く言語によって印象が全く変わることもあるので、その比較をしてみるのも面白いですよ!

上級で、日本の大学や大学院で専門的な授業を受けている、またはこれから受けたいと思っている人は、自分の専門や興味のある分野の専門書をオーディオブックで聴いてみることをおすすめします。専門的な内容を、耳だけで聴いて理解できるようになれば、実際の授業にも自信をもって参加できるようになるでしょう。

いずれにしても、一度聴いてみて、理解できないものやおもしろいと思えなかったものを無理して聴き続ける必要はありません。あくまでも内容を理解して楽しむことを大切にして、できるだけたくさんのものを習慣的に聴くことを意識しましょう。

細野怜花

愛知県出身。ドイツ語を勉強しています。バイト先でヒンディー語も自然習得中。着物オタクと日本語教師もしています。