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日本語での会話を簡単にする方法

text: 久次優子

先日、私がお風呂に入っているとき、小学1年生の娘がお風呂のドアの外から「さほって、何色?」と聞いてきました。「さほ」は娘の名前です。私は一瞬「?」と思いましたが、すぐに「白」と答えました。

あとで、このコミュニケーションは、私と娘の間でしか成り立たないものだなと思いました。私が娘の質問に答えるまでの一瞬の間に考えたことは、

  • 「さほ自身の色?そんなことわざわざ聞きに来ないよな…」
  • 「今はいつも娘が歯磨きをする時間だな」
  • 「昨日、家族全員の歯ブラシを新しい歯ブラシに換えたな」
  • 「ああ、さほ自身の色ではなく、自分の歯ブラシがどれか分からず、歯ブラシの色を聞いているのだな」

です。

娘は、「さほ」について聞いているということ、色を聞いているということ、この2つの情報だけで私が答えられると考え、質問しました。そして、私はその情報だけで、娘の今の状況に考えを巡らせ、みごと答えたのでした。

もしこれが日本語の授業なら、教師として私は「さほの歯ブラシって、何色?」と聞かないと通じないよ、少なくとも「さほのって、何色?」と聞かないと物の色を聞いているということすら分からないよとコメントしたかもしれません。

しかし、実際のコミュニケーションでは、2人の関係性によって、お互いに当然知っていると思われる情報は省かれて伝えられ、言葉はその状況やコンテキスト(文脈)で補われて理解されます。

上の事例では、私と娘は親子で、日々共に暮らし、お互い多くのことを知っているので、「さほって何色?」だけでも、たくさんの情報を補って理解することができました。これは家庭の話に限らず、話す相手と共有している情報が増えれば、完全な文を言わなくても、たとえ単語だけであっても、十分に理解してもらえるということです。

つまり、お互いをよく知り、色々な経験を共にすることによって、会話は簡単になるのです。

大阪大学には、ランチタイムに英語、中国語、朝鮮語、スペイン語、ドイツ語、フランス語でおしゃべりする「多言語カフェ」、日本語でおしゃべりする「日本語カフェ」、互いの得意な言語や文化を学び合う「タンデム学習プロジェクト」など、人と出会い、関係を築きながら学んでいくための場が色々あります。

そこで出会った人たちとさまざまな経験を共にし、関係を築いていってください。日本語での会話はきっとやさしいものになっていくはずです。

久次優子

大阪生まれ大阪育ち。大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程。自然の中で遊ぶことと旅行が好きです。最近は家族でキャンプを楽しんでいます。